共働学舎

生きる場所のつくりかた 新得・共働学舎の挑戦

CATEGORY : SOCIETY DATE : 2013/11/17

 先日、ポレポレ東中野で「共働学舎とそのなかまたちの収穫祭」というイベントに行ってきました。イベントでは、共働学舎で作られたチーズ・ソーセージ・パン・クッキー・味噌・豆・米・野菜・工芸品等の販売、手話ダンス 、共働学舎を紹介する写真スライド 、トークショーが行われました。

私が共働学舎を知ったきっかけは、友人が編集を手がけた。島村菜津さん著「生きる場所のつくりかた」~新得・共働学舎の挑戦~ 家の光協会出版 を読んだことです。

ikirubasyo_book

本の帯から引用・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
社会になじめなかった若者たちが集う北海道のある農場。
そこは自分に合った仕事を自分のペースでできる不思議な職場だった。
なぜそこで人々は自分を取り戻していくのか?
その秘密に迫る感動のドキュメント。
生きづらさを抱える人にとって、多くのヒントがつまた1冊。
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 私は、現在の新自由主義的な経済のあり方に疑問や生きづらさを感じていて、資源や労働力の無駄遣いで生き物も地球も破壊されていくようなサイクルから、どうやって変わっていけばいいのか悶々と考えていたところでこの本に出会いました。
今の社会の時間の流れや構造とはまったく違った自然の流れと調和している共同体が35年も前から日本に存在していたと知り、とても勇気づけられました。
この本では、共働学舎創立・運営の苦労や工夫の壮大なお話や、様々な活動やものづくりの紹介がされていて、そこで生活されているメンバー石川さんの興味深い数奇な人生なども語られ、非常に濃厚で感動するものでした。

共働学舎は宮嶋眞一郎さんにより、1974年に信州の小谷村で創立されました。現在は北海道と長野に3ヶ所あり、息子の望さん、信さんらに引き継がれ運営されています。
共働学舎では、「生き物が、すべからく心が落ち着く環境づくり」がされています。
新得共働学舎代表の宮嶋望さんは、うつ病や心の不安定さはかなりの部分で、生活する環境をととのえてやることで改善に向かわせることができるのではないかと考えていて、農場では建物の内装の素材は徹底して、木材や自然石などの自然素材にこだわっています。
また、炭埋設などの磁場調整でイヤシロチ化や(http://www.igakutogo.com/narasaki.htmlイヤシロチの説明がわかりやすく載っていたページがあったので載せておきます。)、一部ではバイオダイナミックの農作物づくりもしています。徹底的に追求し時間をかけてつくったチーズはモンドセレクション金賞や数々のチーズオリンピック でメダルを受賞しています。
宮島望さんの長女杏奈さんは、シュタイナー幼稚園で働いた後、フィンランドで声を出すことで自分と向き合う発声法を学び、現在は新得農場でメンバーを対象に音楽や絵画の定期的なレッスンを行っています。イベントのスライドで紹介された統合失調症だという方の絵画で、この方は基本的に魚の絵ばかり描くそうなのですが、初めは寒色を基調にした孤高の魚の絵から、レッスンを受ける中で次第に、色鮮やかで親子が揃っている魚の絵などに変化していました。
共同学者では、誰かから仕事をやれと言われるのではなく、メンバーそれぞれが自然に、自分にあった仕事を見つけ自主的に仕事をするようになります。トークショーでのメンバーの石川さんのお話では、共働学舎に来てからは「戦うことをやめた。他者の存在をありのまま認めるようになり、自分も変わった」とおっしゃっていました。また本の中では自分がかわったのは「動物たちのおかげかな」とも呟いています。
これらの目に見えない部分に焦点を当てた生き方はこれからの時代、益々必要になってくるのではないでしょうか。

 共働学舎では1泊2500円で体験も行っています。私も種まきの季節になったら、何日間か泊り込みで体験させていただきに行くつもりです。イベントでは、私はお肉や乳製品は基本的には食べていないのでチーズやソーセージは買いませんでしたが、野菜やパンは無農薬で手作りなのに値段も安く、とても美味しかったです。
共働学舎のホームページ http://www.kyodogakusya.or.jp
共働学舎新得農場のホームページ http://www.kyodogakusha.org

「共働学舎の構想」の中から宮嶋眞一郎さんの文章を一部抜粋して載せます。

競争社会ではなく協力社会を

今の社会がこれでよいと思っている人は少ないと思います。それではどこに問題があるのか、熱心に考えざるを得ません。個人の考え方やあり方には相違があっても、社会全体としては競争社会であることが根本的な問題であると思います。人生の目的や価値の基準が競争原理に基づいている場合が多くあります。競争がなくては進歩はないと考える傾向が強くあります。そして競争社会は当然勝者優先となり、勝者がすぐれた人であり、勝てない人は駄目な人、役に立たない人と思われ、知らず識らずのうちに差別と不公平の意識が生じます。
~省略~
共働学舎は、今の社会通念となっている点数によって評価される価値観ではなく、人間一人一人に必ず与えられていると信ずる固有の生命の価値を重んじ、互いに協力することによって、個ではできないさらに価値のある社会をつくろうと願うものです。目に見える命は、その力量も含めて図ることが出来ます。しかし特に人間にとって大切なのは目に見えない生命です。正直さ、温かさ、誠実さ、信ずる心、愛の心などは計ることが出来ません。科学技術の時代となって、これらの計ることの出来ない大切な生命は、どうしても軽んじられるようになってきています。
共働学舎は目に見えない生命の大切さを重んじます。それは障害や病気を生来与えられて、生きるのに苦労している人の中に、見えない生命のよさと輝きを、より多く発見できるからです。
~省略~

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